OMORI考察まとめ

みんなOMORIやろうぜ 英語版の内容に基づいています

ゲーム由来の元ネタについて

※このブログのすべての投稿にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

 

OMORIが様々な作品からの影響を積極的に公表している作品だ、ということは以前に述べた。そして文学や音楽といったもの以上に、ゲームからの影響は大きい。「マザー」シリーズ、「ゆめにっき」については今更説明する必要はないだろうが、それ以外のゲームの影響も決して無視できない。

 

だが、ゲームの元ネタについて解説するのは、今まであえて避けてきた。それは私がゲームをあまりプレイしていないため、見逃していて解説できない小ネタが多数存在していると思われるからだ*1

また、実際に遊んだことがないゲームについて、元ネタを探したり考察を広げるのは非常に難しい。

 

解説を避けたもう一つの理由は、他のゲームについて語るときに、「OMORI」と比較するような書き方になってしまうのを避けるためだ。*2例えば、OMORI,AUBREY, KEL, HEROのステータスはネス、ポーラ、ジェフ、プーのそれを意識していると思われるが、それについてより深く話すとなると、それぞれの戦闘システムの良し悪しについても話したくなる。*3MOTHER2は30年前のゲームだからあれこれ言ったところで対して影響はないだろうが……。

(OMOCAT氏と交流があるToby Fox氏の)「UNDERTALE」「DELTARUNE」はかなり似た立ち位置のゲームであり、両方のファンだという人もいるだろう。私もその一人である。だが、ファンコミュニティが違う(特に現時点での日本では)のも事実であり、両者を単純に結び付ける、あるいはストーリー構造の違いについて比較するような考察を私が書くのは違うな、と言う気がしている*4

なるべくゲームについて火種になりそうな話題は避けたい、というのが私の本心だ。

 

しかし、ここでは詳しい解説はしないものの、「OMORI」の過去のゲームへのオマージュが小ネタという範囲を超えているのは事実だ。HEADSPACEとFARAWAY TOWNの間の「これどっかで見たぞ」という感覚は、他のゲームとOMORIの間の既視感と平行線になっている。SUNNYのデジャヴュを私たちも共有することで、彼がリアルに生きているかのように感じられる。

LOST FORESTやWEEPING WILLOWからは「ゼルダの伝説」の迷いの森や大妖精を連想するし、BLACK SPACEにはゆめにっきの「地獄」そのままなマップが存在する。SPROUT MOLEからピクミンどせいさんを、667th experimentからきゅうきょくキマイラを、BRANCH CORALの試練からネスのあくまを、ROBOHEARTからマシュマロちゃんを連想する人は多いだろう。MOTHER2がポーキーの「げひんなノック」から始まるのに対し、SUNNYはKELのノックをきっかけとして外に出る。

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「おとこのこが 4にん せんろのうえを あるいてる…」(ポケットモンスター赤・緑)

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「どうぶつのもり」のとたけけを連想させるGIBS/MICHAEL。"SECRET CD"は手に入れただろうか?

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"Snake Eater" (メタルギアソリッド3主題歌)より。

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「ポストには むすうの さけびごえが はいっていた。」(MOTHER3)

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スペシャルいちごケーキ作りにて。
SPROUT MOLEの仮面が、「ムジュラの仮面」に登場するデクナッツのお面に似ている。

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なんだか あやしげな テレビ…… こっちが みられている ようだ……
(ポケットモンスターダイヤモンド・パール)

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ダンジョンおとこ(MOTHER2)のような張り紙が存在する迷路。*5

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PET ROCKでバトルし続けると挑戦できる、FARAWAY PLAZAのfour veterans(ポケモンリーグの四天王に相当)。ただし、チャンピオンの手持ちは片翼のJASHである。

システム面でも先行作品の影響力は強い。PROLOGUEでBASILの家に向かう途中、ANGRY/HAPPY/SADの攻撃パターンと、FOLLOW-UPスキルの使い方までチュートリアルしてくれるのは、任天堂作品を思わせる。同時に使えるスキルが4つまでなのはポケモンのわざを参考にしたのだろう(回復スキルがフィールドでも使えるのはMOTHERシリーズの仕様に近いが)。細い木を切るOMORIのモーションは「いあいぎり」と同じで、AUBREYのTAGスキルは実質「いわくだき」である。

そして何より、選択によってルートが変わる、ゲーム性が一変するというのは、UNDERTALEで一躍有名になったシステムだ。

 

OMOCAT氏による、他ゲームとのクロスオーバー

まだ名前を挙げていないゲームも沢山あるのだが、この辺で打ち止めにしておこう。これらの大量の引用にもかかわらず、オマージュがゲーム中の要素として違和感なく溶け込んでいるのは注目に値する。OMORIの世界が単体で綺麗に完結しているからこそ、他のゲームとの繋がりがうまく機能しているのだと思う。

 

後記:

いくつかの英単語について辞書を引くと、なかなか面白いことが書いてあった。*6

 

white space: ≪俗≫ 空白時間, ひまな[あいた]時間; 〘電算〙空白(文字).
 空白文字とは、パソコンでspace, tab, enterキーなどを押したときに入力される文字の総称。
言葉の通り、WHITESPACEにいるOMORIは何もせず時間をつぶしている。

headspace: ≪液体などの容器の≫上部空高,頭隙(とうげき).
 Longman Dictionary of Contemporary Englishでは"your general mental and emotional condition”(精神・感情の状態全般)という語義が載っており、こっちの意味で見かけることの方が多い。
 とはいえ、HEADSPACEは夢の世界では上層部に位置しているため、前者の言葉のイメージも間違ってはいない。

black space: 〘ラジオ・テレビ〙 放送が予定されていながら実際に放送されない時間.
 前二つと比べるとあまり見かけない単語。だがBLACKSPACEの「存在するけど隠されている」性質はここからも察することができる。

faraway:         ≪時間的・空間的に≫ 遠い,はるかな,遠くからの ; 〈表情・目つきが〉 かなたをみるような, 夢見るような.
 現実世界編の舞台であるFARAWAY TOWNだが、単語の意味を見ると実は「どこか遠い(架空の)町」というニュアンスが強調されている。

 

これらの単語の日本語版の訳がどうなるかは分からないが、そのまま「ホワイトスペース」など片仮名で訳される可能性もありそうだ。何かの参考になればと思い載せておく。

 

後記2:

POLLYさんの公式イラストきましたよ。肩出しだあ……

BASILとPOLLYの絵もっと増えてほしい

*1:例えば、OMORIに影響を与えていそうなゲームとして(OMOCAT氏を含む)複数人が「ドラクエ」「キングダムハーツ」「ファイアーエムブレム」などの大作シリーズ、「Ib」「LISA: the Painful」「OFF」といったRPGツクールゲームの名前を挙げているが、私はこれらのゲームをプレイしていない。関連性について誰かが考察してくれることを期待している

*2:実は「OMORIと文学作品の関係 その3 」では当初、とある村上春樹からの影響を公言しているゲームとの比較をする予定だったが、その部分は放棄してしまった。

*3:余談。ネット上で"KEL NUKE"と呼ばれている、KELが大ダメージを与えることで戦闘がヌルゲーになってしまうコンボがあるが、MOTHER2にも「ペンシルロケット20」というバランスブレイカーなジェフ専用武器があったことを思い返せば、意図的な実装である可能性は高い。どちらも判定がスピード依存なところまで一緒だ。

*4: (以下他ゲームのネタバレ注意。)具体的な内容には触れないが、書こうか迷っていた考察は次のようなもの: OMORIとよく同時にお勧めされている「UNDERTALE」「DELTARUNE」あるいは「ONESHOT」といった作品に見られるメタフィクションはOMORIにはない。それはこれらのゲームの扱うテーマとストーリー構造が異なっているからだ。ではどこが違うのか?「OMORI」にプレーヤーが登場していたらどうなっていたか?

*5:ちなみにこのダンジョンのゴールに存在するYOU DID IT!「やったね!」の張り紙だが、別の意味にも読み取れることで2周目のプレイヤーを戦慄させている。

*6:断りがないものは「リーダーズ英和辞典」による。