OMORI考察まとめ

みんなOMORIやろうぜ 英語版の内容に基づいています

バジル その1 バジルの花

2月のバジルの誕生日に合わせて考察記事を書こうとしているのだが、これが非常に難しい。間に合うか分からないため、現時点で分かっていること、疑問点を載せておく。

※ゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます
※英語版、日本語版の用語がごっちゃになっています

 

夢の世界のバジルは2人(花の王冠を被ったバジルとSTRANGER「知らない人」)がいて、彼らが途中で分裂したことが作中語られている。

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そしてひまわりは「現実の」バジルが自分の花として選んだものであり、彼らを表す花ではない。*1


花冠のバジルに割り当てられた花はデイジーだ。それはNEIGHBOR'S BEDROOMに置かれた花や、「バジルの草原」で生えている一面のデイジーからも示唆される。

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白いデイジーがもつ「純粋・無垢」の花言葉は、花冠のバジルがサニーとバジルの罪を知らない存在として作られたことを示唆している。

 

ただ、バジルにはもう一つ花がある。white egret orchid, 白いサギソウだ。

白いサギソウは現実世界だとバジルのおばあちゃんのそば、秘密のたまり場のピクニックシート、マリの墓の横などに置かれている。バジルが置いたものであるのは間違いないだろう。*2
一方、夢のなかではサギソウは失われた図書館、ブラックスペースへの扉など、「真実」を連想させる場所に置かれている。同じく真実への道案内をし、ブラックスペースを旅するSTRANGERに花を割り当てるならサギソウになるのではないか?と思われる。現実のバジルとヘッドスペースのバジルにそれぞれ固有の花があって、「知らない人」のバジルにはないのも変だろう。
……ここで問題になるのがサギソウの花言葉だ。「夢でもあなたを想う」という言葉を踏まえるならば、STRANGERはバジルが夢の中でサニーを想った末に現れた存在だということになる*3。STRANGERが決してオモリの名前を呼ばないこと、現実のバジルを代弁するような発言をする理由はこれで説明できる。

ブラックスペースを巡る旅の末、トゥルールートではCHURCH OF SOMETHINGにてヘッドスペースのバジルとSTRANGERのバジルは融合する。(逆に、ひきこもりルートでは分離したままであり、サニーとバジルのSOMETHINGの戦いになる。)*4

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トゥルールート(左)とひきこもりルート(右)。

よって、オモリがRED SPACEで殺したのはHEADSPACEのバジルの中に入ったSTRANGERのバジル(そしてその正体は夢の中でつながった現実のバジル)ということになる。トゥルールートで"Do you want to save BASIL?"の選択肢が出るのは、サニーが現実のバジルを助けようとする場面と一致する。

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だが、オモリは初めてサニーの意志に逆らって(=メタ的に言えば、プレイヤーの操作を受け付けなくなって)バジルを刺す。その理由はサニーを守るためか、夢への侵入者を撃退するためか、現実を否定するためか……

とここまで書いてきたのだが、「サギソウはSTRANGERの花だ」「STRANGERは現実のバジルそのものだ」という仮説の上に積み重なった推論なので、前提が崩れるとどうしようもないんですよね。私が何か見落としている可能性もある。現時点で説明できていない疑問点は、「なぜオモリはどちらのルートでも、ブラックスペース内で繰り返し色付きバジルが死ぬところを目撃するのか?」というところ。

さらに、STRANGERと融合した後にバジルがいう"Please forgive me, my best friend..."だが、私の記憶が正しければ現実のバジルが言ったことは一度もない。
そもそもバジル君の思考的には「僕が君を守ってあげるよ!」なので、サニーに許してもらうという考えがいまいち当てはまらない。

ONE DAY LEFTで現実のバジルと交互に表示される場面はあるが。

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このシーン、できれば自身のセーブファイルかだれかのプレイ動画で確認してほしいのだが、序盤の"Don't worry... Everything is going to be okay..."(心配しないで 大丈夫、きっとうまくいく……)は描写的に現実のバジルが(マリの死体を偽装するときに)言ったと分かる。

f:id:comsoshirou:20211223181717j:plainしかし、「ぼくを許してくれる?」は状況にそぐわない。本当に言ったのはニューゲーム直後に表示される方"No matter what happens... promise me that we'll always be there for each other..." (何があっても…いつもそばにいるって約束して…)であろう。だからこの演出をもとに現実のバジルが許してと言ったとは思えない。*5

ついでにいえば、バジル目線「いつも一緒にいる」という約束を破ったのはサニーのほうなので、それに対する怒りと恐れが最終日の戦闘の動機になったと考えられる。バジルが許してもらう側というのはやはり不自然。

先ほどの説との整合性を取るならば、

1.バジルは深層心理では自分のやった犯罪を恐れており、サニーの夢の中で真相を見つけ出す助けをしている。そしてサニーに許されることを願っている。
2.これは「バジルも心の底ではそう思っているはずだ」というサニーの願望が現れた姿であり、現実のバジルとは関係ない。

のいずれかとなる。2番だとすると……つまりサニーは偽装を行ったバジルのことを許したくないと考えてるのか?

そもそも「許し」を求めているのはサニーの方のはずなのだが。

なかなか考察としてまとまらないのが現状だ。

他にも、「月を眺めるバジル」が何度も登場するが、これが何を意味するのか確定できないという問題*6や、

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月を眺めるバジル(ブラックスペースと現実世界)。

現実世界のバジルの家庭環境(特に親との関係)についてなど、分かっていないことが多くある。

バジルのSOMETHINGについても(色んな人が言っている考察も一理あると思うけど)、まだ正体について納得がいく意見はない。重要な性質である「触手?が伸びてバジルを動けなくしている」「他のSOMETHINGと違い、捉えたバジルを今にも殺そうとしている」点を踏まえた考察がないからだ。

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バジルのSOMETHINGとの戦闘(左:トゥルールート, 右:ひきこもりルート)

上手くまとまれば、2月に続きを書けるかもしれない。

 

追記:実は日本語版が出た後に流れた「OMORIの追加コンテンツが来る」という噂がある。そのリークされたグラフィックから予想されているのは、オモリが(恐らくひきこもりルートにて)バジルと一緒にバトルできるようになるということだ。ゲーム内の出番が相対的に少なく、どうしても推測の域が大きくなるバジルの考察もそこで大きくはかどるかもしれない。
しかし、そもそもがソース不明のリークであり、画像が本物か、追加コンテンツが本当に出るのかは分からない。
なるべく期待をせずに、今出ている情報から推理していきたい。

*1:白いチューリップが本来オモリの花ではないように。……トゥルールートでバジルの庭を訪れたとき「サニーのように」という言葉が聞けること、ひきこもりルートでは逆にセリフがなくSTRANGERに見つめられるだけになることから分かる。

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*2:TWO DAYS LEFTでバジルが秘密のたまり場に入った理由も、サギソウをお供えに行ったからかもしれない。

*3:あるいはもっと現実的な解釈をするなら、サニーが「本当はバジルはこう思っているのだろう」と考えた存在、か。

*4:枝サンゴにこういった発言がある。

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「生まれ変わった彼」はCHURCH OF SOMEHTINGにいるバジルのことを指しているのだろうが、「君自身をこの世界から、ヘッドスペースにとって自然な方法で消す」がよく分かっていない。「君ならやるべきことをわかっているだろう、夢見人よ」と言われるので、夢見人=サニーをヘッドスペースから消滅させる方法、ということになる。恐らく、オモリとサニーを分離させることを意味しているのだろうが……

*5:ところでこの「一緒に犯罪行為に巻き込むことで結束を高める」という方法、どっかで読んだ気がするんですが……。

*6:そもそも月が何を意味するのかが分からないと考察できない。現状の候補は2つ。

  1.英語で"lunatic"が「気が触れた」「月に魅入られた」を意味するように、月を眺めるというのは狂気の世界に魅入られていることを意味する。バジルの精神が不安定になっていることを意味している?

  2.以前の記事で挙げた疑問「なぜヘッドスペースには月が2つあるのか」から発展させた場合、OTHERWORLDが「人類が到達した天体」としての月なら、もう片方は「永遠に到達できない領域」としての月を表すと考えられる。「月と六ペンス」の例などから分かるように、月面着陸より前は月は届かない理想、夢などと結び付くことが多かった。バジルが現実から目を背けて、「うまくいった」世界を夢見ていることを暗示しているのか?

ただどちらも十分に説明できていない部分がある。