OMORI考察まとめ

みんなOMORIやろうぜ 英語版の内容に基づいています

オモリとバジル その2 There is a flower within my heart

※このブログの投稿には、ゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

※英語版、日本語版のスクリーンショットが混在しています

Daisy, Daisy, give me your answer do!
I'm half crazy all for the love of you!
It won't be a stylish marriage, I can't afford a carriage
But you'll look sweet upon the seat of a bicycle made for two.

- "Daisy Bell" by Harry Dacre.

 前回の記事バジルの誕生日に合わせた考察記事を書く、という宣言をしていた。しかし、書いていくうちに「これオモリの正体についてもう一度整理しないと駄目だな」というのが分かってきた。

というわけで、今回は7月に書いた「結局OMORIって何者なのさ」の続き(というか考察の訂正)でもある。こちらを読まなくても理解できるように書くつもりだが、興味があれば参照してほしい。

二人のオモリ

2人のバジル(緑のバジルと「知らない人」)がいるのだから、対になるオモリも2人いる。私が気づいていなかっただけで、調べたら何人かがすでに指摘していた。

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日本語版:

「貴方にとって、真実は辛いものです。
かつて、貴方はそのせいで破壊的な形になってしまった。
今の貴方は、それを抑えるための形をとっていますが……
それは、同じく邪悪なものです。しかし、同じく邪悪の中でも、まだ良い方でしょう。」

日本語版の文章だといくつかニュアンスが抜けているので補足すると、"stray to ~"は「迷って~に辿り着いてしまう」という意味。ここでも「道に迷う」という概念が強調されている*1

そして、英語版では"the better of the two"と、evilな存在が2種類あることがはっきり示されている。

一人目のオモリは、ゲームを起動してすぐに出会う方のオモリだ。彼はホワイトスペースに「ずっとずっとひきこもっている」。そして、私が以前立てた仮説は、このオモリが操作キャラクター、つまりサニーがヘッドスペースというゲームの世界を旅するにあたり、中に入って動かしている存在だという内容だった。

しかし、オモリはもう一人いる。それはオクブカ井戸の奥でも言及されている。

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「邪悪なオモリ」とは最終決戦で戦うことになる。オモリ(ラスボス)は倒す事に姿が変化し、最後は不気味な姿へと変化するが、彼が破滅願望を抱え、サニーを憎んでいることはその言葉から読み取れる。

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そしてこのオモリこそが、RED HAND'S THRONEに座る存在、RED SPACEの支配者だ。
以降、この存在のことを〈オモリ〉と書くことにする。

「なにか」の教会(THE CHURCH OF SOMETHING)での出来事をもう一度整理しよう。

ひきこもりルートでは、(サニーが操作する)オモリは「なにか」の教会に囚われていた、花冠のバジルを救出する。だが、「知らない人」は「このサイクルの繰り返しを止めなければ……(I won't let this cycle repeat itself...)」と言い、直後にサニーが目覚める。

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「知らない人」はオモリの中にいるサニーを引っ張り出し、自分と向き合うように強制したのだろう。サニーは「知らない人」に対し何もすることができず、ハート1の状態にまで減らされてしまう。

気づけばサニーはレッドスペース(赤い手の玉座がある部屋)にいる。彼は途中這いつくばりながら階段を昇るが、力尽きてしまう。

そして〈オモリ〉が赤い玉座から降りてくる。*2彼はサニーを見下ろし、サニーの代わりに「知らない人」の前に立つ。「知らない人」は一人にしてくれと言い、そして〈オモリ〉が教会にいるオモリの中に入って立ち上がる。*3

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こうして〈オモリ〉はサニーの代わりにオトナリベッドルームへと行き、現実世界で(サニーの体を乗っ取って)目覚める。鏡を見るとオモリの姿が映るのは、サニーがそう思い込んでいるから、というより、〈オモリ〉が正しい自分の姿を認識しているから、と解釈するべきなのかもしれない。

 

ここまでひきこもりルートの展開を追ってきたが、トゥルールートの場合はどうだったか。

真実へ辿り着こうとするサニーは「なにか」の教会にて、花冠のバジルと「知らない人」が融合するところを目撃する。そしてバジルを飲み込んだ暗闇の中に入ると、そこはあの「電球がない部屋」だった。

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この「なにか」は〈オモリ〉のことを指している。バジルが言う通り、〈オモリ〉はSOMETHINGの一つ=サニーにとっての恐怖の対象だ。
ひきこもりルート専用の武器、「赤いナイフ」でも説明されている。「真新しいナイフ。刃の部分になにかが映っている。」

バジルが「一緒にいこう」と言った直後、扉が突然開く。そして何かが通り過ぎた……と思うと、バジルが赤い手に掴まれ消えてしまう。

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〈オモリ〉はRED HAND、赤い手の使役者だ(ひきこもりルートではスキルの一つに加わる)。最初のオモリに向かって進んでくる手により、〈オモリ〉はオモリの体を乗っ取った。彼は身動きが取れなくなったバジルをナイフで殺す。プレイヤーの操作を受け付けなくなったことから、〈オモリ〉がサニーをオモリの体から追い出したことがわかる。

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枝サンゴの「彼を迎えにいくには、君自身をこの世界から消すしかない。ただし自然な方法でやらなければならない。このヘッドスペースにとっての、自然な方法で。」という言葉はこのことを指していると思われる。この日初めて、サニーは「オモリとして自殺する」のではなく、オモリの体を〈オモリ〉に明け渡すことで目覚める。

 

余談。〈オモリ〉がバジルを殺した場所の周りには、他のバジルの死体と、LITTLE ONE(日本語訳では「おちび」)と呼ばれる黒い生き物が散らばっている。このLITTLE ONEについては、Fandom Wikiなどでは「バジルの死骸が変化したもの」と考察されている。

〈オモリ〉がバジルを殺したのは初めてではない、ということだ。


他のブラックスペースの部屋でバジルが(時に理不尽な方法で)殺されるのも一応これで説明できる。どのような経緯かは分からないが〈オモリ〉はバジルに殺意を抱いており、恐らく赤い手を使役することでバジルを何度も殺しているのだ。

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ヘッドスペース、ブラックスペース、〈オモリ〉

〈オモリ〉は何者か。それはヘッドスペースの成り立ちを整理すると分かってくる。

時系列順にまとめよう。

・事件が発生する

・サニーとホワイトスペースが生まれる

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・ホワイトスペースの扉から、サニーは様々な世界を旅する*4

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恐らくこの「いろんな世界」で出会った生き物たちの中に、ハンフリー、アビー、黄色い大きな猫の「三つの大いなるもの」がいたのだろう。

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・だが、ある日サニーはブラックスペースの原型となる世界に行き着く。

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サニーはここで「暗闇にのまれて」しまった。ブラックスペースの「知らない人」の言葉を借りれば、「破壊的な形になってしまった。」

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問題はここには混沌だけでなく、「真実」が含まれていたことだった。そして「贖罪への扉」も存在していた。

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ブラックスペースの世界から盗られたものとは、電球のことだろう。

サニーは自分を責める声、現実を否定してしまえばいいという声、真実に向き合えと言う声に耐え切れなくなった。かつての仲間を(自分を含め)憎むようになった。バジルの写真アルバムを黒く塗りつぶしたのはこの時期だろう。あるいは、彼が引きこもるようになったきっかけが、現実でバジルに危害を及ぼしてしまうのを避けるためだったかもしれない。とにかく、サニーは夢の中で繰り返しバジルを殺し続けた。

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・その後、サニーは全てを忘れることにした。分散していた世界をまとめ、自分を傷つけるものを地中深くに埋め、心地よい(ド田舎おじさんの言葉によれば「カラフルで可愛らしい」)ものはヘッドスペースとして地上に移した。

電球はホワイトスペースの黒い電球の中に隠された。扉がつながる先は、おともだちがいつもいるオトナリルームに固定された。

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・だがサニーは自責の念から逃れられなかった。そのため、何も知らない「オモリ」という存在を作り上げ、自身の名前を捨てた。(「知らない人」の言葉によれば、同時にバジルも2つに引き裂かれた)
「純粋、無垢」のデイジーは本来、2人のために用意された花だったのかもしれない。

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こうして夢見人、サニーはヘッドスペースをオモリとして旅するようになった。

・バジルとマリはそれでも、真実への道を見つけようとする。オモリはマリに対しピクニックシートという安全地帯を用意し、バジルが失われるたびに、ブラックスペースまで救出しに行く、というサイクルを繰り返す。

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・しかし、オモリとバジルがブラックスペースに閉じ込めた知識と悪意は、なお成長を続けていた。それはレッドスペースに君臨する〈オモリ〉に、世界を彷徨う「知らない人」にそれぞれ変わった。

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知識/無知は力となる。

恐らく、オモリはヘッドスペースの中で「真実」が明らかになりそうになるたびに、(無意識的にかもしれないが)その知識をブラックスペースへと追放していったのだろう。しかし、そうすることで〈オモリ〉の力は増していき、「真実」への入口はオトナリルームへと近づいて行く。

 

〈オモリ〉の正体はサニーが捨てた、暴力衝動、現実を否定する気持ち、自己嫌悪の集合体だ。

〈オモリ〉の最終形態を見たことがあるだろうか。見るためには、「オモリは屈しない。」(OMORI will not succumb.) というメッセージが表示された後もう一度倒す必要がある。

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後ろに人影が写っているが、一番右の人影にリボンが見えないだろうか?そして上から何かが垂れ下がっているかのような影……。

実際バックグラウンドの素材(fandom wikiで確認できる)を見てみると、ここに見える影は左から現在のケル、バジル、ヒロ、オーブリーだと分かる。
彼らはみな首を吊っている。これに気づいたときがゲーム中で一番怖かった。

〈オモリ〉の暴力性、攻撃性はサニーの自殺エンディング(バッド、ナイフ)の両方に関わっていることからもわかる。オモリがAFRAID状態にならないことの裏返しとして、〈オモリ〉は現実世界の自分の肉体を傷つけることに躊躇がない。*5

 

7月の記事ではわたしはオモリのことを「サニーの生きる意志」だと説明した。それは今も正しいと思う。問題は、オモリの生き方が「怖いもの、恐ろしいものを『知らない』ことにして存在を隠してしまう」ことだった。

〈オモリ〉はその裏返しの存在……自分にとって不都合な存在を「消す」ことで、生きようとするものだ。

 

必要なのは、〈オモリ〉を攻撃し続けて否定するのではなく、受け止めることだ。マリと「最後の演奏会」をすることで、それは贖罪となり、サニーは自分自身のことを認められるようになる。それは裏を返せば、オモリがサニーを受け入れるということでもある。

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〈オモリ〉はSOMETHINGの一つだ、という説明をした。他のSOMETHINGが新たなエリア(特にマリのSOMETHINGについては「鍵」である電球)を守っていたように、〈オモリ〉も外の世界からサニーを/外の世界をサニーから守っていた。サニーが現実世界で生きることを選ぶためには、〈オモリ〉の恐怖を克服する必要があったのだった。

 

ヒマワリとチューリップ

せっかくのバジルの誕生日なのにオモリの話ばかりだと申し訳ないので、気づいたことをいくつか紹介。

バジルにとってサニーの存在が「非常に仲の良い友達」以上のものだったのは確かだ。ヒマワリの花言葉はadoration/崇拝、loyality/忠誠。どちらもヒマワリが太陽(sun)の方を向き続けることから来ている。

一方、白いチューリップはforgiveness/許しを表す花だ。罪を犯し贖罪を求めるサニーに対応している……と言いたくなるのだが、バジルの話を聞いていると少し不思議に思うところがある。

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バジルの説明は「チューリップがいかに素敵な花か」という点に置かれており、チューリップの色については触れられていない。

バジルはヒロをバラに喩えるとき「バラには色んな色があって、色ごとに花言葉があるんだ」と説明している。*6

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「様々な色がある花」としてバラの次に思いつくのはチューリップだろう。チューリップについては色の違いの説明をしなかったのはなぜか?……サニーも選択によってはまた「みんなに愛される」"Universally Loved"*7存在なのに。

「シンプルなチューリップには一番シンプルな白が似合う」とバジルが考えてあえて説明しなかったのかもしれない。だがバラとの対比を踏まえると「色を一色に絞りたい=サニーに対する好意を自分だけに留めておきたいと考えている」と勘繰ることもできる。

なんといっても、チューリップ全体の花言葉は「完璧な恋人」だ。*8

また、単純にサニーの好みの色が白で、それに合わせた可能性もなくもない。修理屋に置かれた赤いチューリップ(と思われる花)の生け花について、サニーは"a bit pompous"(少し派手過ぎる)とコメントしている。*9

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無論色ではなく他の装飾についてのコメントである可能性もあるが。

いずれにせよチューリップの花に、バジルのサニーへの好意が仄めかされているのは間違いないだろう。

 

バジルの顔グラ

バジルはヘッドスペースでは花冠を被った姿、現実世界では一輪の花を髪に挿した姿の顔グラが用意されている。このため「バジルといえば花」という関係性がゲーム全体を通して強調されている。

特にブラックスペースの「スイカ割りの部屋」。久しぶりに夢世界のバジルと再会する場面だが、彼に花冠を渡すまで顔グラは表示されない。まるで「花冠の無いバジルをバジルと認識していない」かのように。

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……という考察をする予定だったが、調べたら花冠を身に着けていないバジルの顔グラが表示されているシーンはいくつかあった。

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しかしこの場合でも「顔グラのバジルは常に花冠を身に付けている」ことは変わらない。

 

現在のバジルも必ず一輪の花と共に登場する。花を身に付けないバジルなどいないかのように。
作中バジルが花を身に付けずに登場するのは2回……湖から救出された後と、最終日の夜だけだ。

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特に後者については、バジルが自分のアイデンティティである花に気を配れないほど、精神的に追い詰められていることを暗示しているように思う。

 

最後のサニーとの会話でも、バジルは花を身に付けていない。彼が心を開いてサニーに本当の気持ちを伝えていることを表しているのだ……と、何の根拠もないがそう思っている。

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余談: 2月18日

冥王星が発見されたのは1930年2月18日のことだ。

ja.wikipedia.org冥王星の発見は1969年7月20日の月面着陸と並び、宇宙分野におけるアメリカの功績として長らく誇りにされてきた。1990年代半ばに冥王星小惑星への分類が提案されたとき反対運動が大きかったのも、冥王星アメリカ人にとって慣れ親しんだ存在だったからだと言われている。

プルートとバジルに関わりがあるわけではなく、直接OMORIの世界と結び付けることはできない。しかし、サニーとバジルがどちらも天文学に関わる日付に生まれているのは興味深い。

公式イラスト

タンポポを持つバジルとサニー。Wow...

お誕生日おめでとう、バジル!

公式ストリーム、最後の30分ほどしか見れませんでしたが、バジルはみんなに愛されてるなあと思いました(ほかにどう言えばいいのか)

https://twitter.com/OMORI_GAME/status/1494917716804706304?s=20&t=vn5uzMDCqbY8a1eKJxClDg

*1:詳しくはWelcome Home.で考察済み。

*2:後のバジルの言葉で分かるが、この間オモリの体は「なにか」の教会にて倒れたままだ。

*3:ちなみにここに貼ったスクリーンショットから分かる通り、RED SPACEの階段からは月が見える。「月を見るバジル」については前回触れたが、〈オモリ〉に対しても月の象徴(狂気など)を適用することはできるかもしれない。

*4:英語版では"a door"と書かれているので、ホワイトスペースのドアがどこでもドアのように複数の場所と繋がっていたようだ。

これは予想だが、「カギは毎回同じ扉を開ける」という言葉から、ホワイトスペース、ブラックスペースに存在する扉の行き先は、どの鍵を使うかで決まるのではないか、と思っている。実際、ブラックスペースではどの位置のドアを開けたかに関わらず、訪れる部屋の順番は決まっている。

*5:「ナイフ」エンディングについては刺す前にサニーは大きな躊躇いを見せる。「自殺しようとする〈オモリ〉をサニーが止めようとしている」のか、「場合によっては人の死でさえ願う〈オモリ〉を止めるためにサニーが最後の抵抗をした」のかは分からない。

*6:ここで紹介される色はピンク「羨望」、オレンジ「情熱」、黄色「友情」だが、一番有名な赤いバラの花言葉「あなたを愛しています」は除かれている。

*7:トゥルールートで得られる実績。日本語版では「愛され者」

*8:

「ドリアン、僕がはじめてきみと会った瞬間から、きみという人間はぼくにまたとない異常な影響を及ぼした。(中略)ぼくが知っていたのはただ、自分は完璧なるものをこの眼でしかと見たということと、世界は僕の眼にすばらしきものとして映るようになったということだけだ。(中略)きみはひとから崇拝されるように生れついた人間なのだ」

 - オスカー・ワイルド「ドリアン・グレイの肖像」(福田恆存訳, 新潮社, 2016)第九章より、バジル・ホールウォードの言葉

「崇拝」のヒマワリと「完璧な恋人」のチューリップの関係は恐らくバジル・ホールウォードとドリアン・グレイの関係を下敷きにしているのだろう。(これについては以前の記事に書いたが、読み返したら非常に分かりにくかったのでそのうち書き直します)

*9:日本語訳は「ちょっと偉そう。」だが、花に偉そうとは言わないだろう。