OMORI考察まとめ

みんなOMORIやろうぜ 英語版の内容に基づいています

このブログの趣旨

警告:

このブログのすべての記事にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます。もしあなたがOMORIをプレイしていないのなら、直ちにこのページを見るのを止め、休息をとったのちにSteamでゲームを購入してください。

OMORI公式ホームページ

www.omori-game.com

Steamリンクはこちら

store.steampowered.com

 

 

 

 

 

 

 

 

2度目の警告:

 

このブログは「OMORI」本編を完全に攻略した人に向けた内容となります。少なくともいわゆる「サニールート」「ひきこもりルート」はそれぞれ攻略していることを前提としています(できればその他のサブイベントも全部見ていてほしい)。OMORIは膨大なボリュームをほこるゲームです。どちらか一方だけやり終えた、あるいは実況動画でストーリーを知ったという方も、もう一度あらゆる場面を探索し直してみてください。このゲームはそうするだけの価値があります。

そのうえで、ゲーム中でできることはもうやりつくした、あとはファンアートを探るか、だれかとこのゲームについて語るしかやることがないとなったら……

 

ようこそ、OMORI考察サイトへ。思う限り、この場所を探索してみてください。

 

追加の警告:

このブログに乗っている情報は、「OMORI」の英語版に基づいています。そのため、一部の単語・解釈について日本語版と食い違っている可能性があります。

画像、引用文は英語版と日本語版(一部他言語版)から引用しています。

【お知らせ】OMORI3周年記念コンサートが11月22日(水)に開催

※OMORIのイベントを勝手に宣伝するだけの記事です

 

MUSICエンジン様が主催する、OMORI 3周年記念コンサートが2023年11月22日水曜日にミューザ川崎シンフォニーホールにて開催されます。

チケットのプレオーダー(抽選販売)は9月1日の18時までとのことなのでお早めに。

 

9月18日追記:
追加公演のお知らせが来ました!

 

※10月18日追記

お昼の追加公演はまだチケットが購入できるようです。

 

……お知らせの内容はこれで全部なので、以下は雑談。

 

新規イラストについて

OMOCATが新たに描き下ろしたというキービジュアル、フォーマルな服装をしているヘッドスペースのおともだちが描かれているというだけで衝撃だったが、みんなに楽器を演奏してもらうなら何か?という疑問に回答が出たのが個人的にとても大きい。

個人的な推察。

ケル&ヒロ: にぎやかな打楽器組。バスドラムは控えめに(時に大音量で)一番下でオケを支えてくれるポジションで、大きいものに憧れがあるケルらしさ。トライアングルはどんなに小さい音でも聴衆の耳を惹きつける、一番前に出るポジション。ヒロのよく出すキラキラがイラスト中でも描かれている。

オーブリー: オーケストラ全体を支えるコントラバス(ウッドベース)。意外だったが、オーブリーの人に寄り添う面やかっこよさ(イラストでもパンツスタイルになっている)を意識したチョイスか。役割が被るエレキベースは4年後の彼女のイメージによく合う。
弓の種類は現在主流のジャーマンボウ(手の甲を下にして持つタイプ)と思われる。音量がよく出ると言われており、パワー系のオーブリーらしい。

バジル: 花冠を被ってフルートを吹く姿はギリシャ神話などに登場するニンフを連想させる……実際、フルートを主役に据えた曲にはそういった歴史的な題材が多い*1。またメンバー全体をバンドとして見た場合、主役となるのはおそらくフルートとバイオリンになる。音域も近いためバイオリンと一緒に演奏するケースも非常に多い。サニーに最も近い存在として割り当てられているのではないか。
一人だけ半ズボンを着ているのも少し浮いた存在感を出している。

 

また、イラスト中の色彩が右にかけて次第に薄くなっていることから、弾いているのはオモリとサニー両方が混じっているのではないか、という考察もTwitter上で複数出ている。

 

3周年コンサート、一体どんな演奏になるのだろうか……。後日配信もされるそうなので、チケットが取れなかった方や予定が合わない方もぜひ見て欲しい。

 

2023年11月26日 追記:

3周年コンサート、本当に素晴らしかったです。

演奏会の様子は後日配信されるようですが、行けなかった方もぜひ最後まで見てください。正直、衝撃が大きすぎて夢のようです……。

なお演奏会のパンフレットは後日オンラインで販売すると告知されている。セットリストのみならず、OMOCAT、bo enへのインタビューも載った貴重な資料だ。この記事で考察していた「各キャラに持たせた楽器」についても解説されているので、興味がある方はFangamerJPのストアをチェックしてみて欲しい。

 

2024年2月1日 追記:

コンサートの配信が3月2日に決定しました。

アメリカの太平洋時間だと3月1日、マリの誕生日に公開されます。アーカイブも残るとのこと。

 

3月2日:

アーカイブが配信されました!

youtu.be

*1:ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」「シランクス」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」から「パントマイム」など。

DRAWFEST4×OMOCAT 講義動画を見よう&「方向」のシンボリズム

 

※この記事にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

2023年6月10日・17日に渡って開催されたpixiv主催のイベントDRAWFEST4。今年はなんとゲーム「OMORI」の製作者である、OMOCATが講師の一人として登場しました。

プログラムは終了し、参加者のみの限定公開だった講義も今は見られなくなっています……が、なんとOMOCATがOMORIの制作過程を語った動画は、特別に今後も見られることになりました!やったね!

youtu.be

視聴するとわかりますが、多分今までに出たどのインタビューよりも詳しい作品の成立過程が語られています。ホワイトスペースのアイディアの起源、各登場人物のモデルとなった人、ヘッドスペース、ハルバル町、ブラックスペースの色や表現形態の違いなど初めて明らかになった情報がたくさん。

「VAST FOREST(ヒロビロ森)が大きな森=大森=OMORIのダジャレじゃないか」というリリース当時からあった噂、本当だったんだ……。

2年前からOMORIを追いかけている人間としては、一番気になったのが13分~から語っている、「OMORIの物語構造にはシンボリズムを大量に取り入れている」という言葉。

作品内に登場するアイテムの象徴については考察をする時常に重視してきた部分だったので、実際にOMOCATから言われたときは少しびっくりした。
シンボル=象徴を見出すのは古くから夢を分析する上で多用される手段であり、同様にOMORIの物語を読み解くガイドとなる存在だと思う。

象徴の具体例はいたるところにある。電球と光がアイデアを指す、従って黒い電球が「発想の抑止」を表すことは作中でも述べられている。作中サニーの選択として何度も現れる「扉を開ける」行為。バジルが植えた花にはそれぞれ花言葉があり、各キャラクターの性格と、作中での役割を暗示している。

あるいは、ラストバトルでサニーが武器とする「バイオリン」(伝える道具)とオモリが武器とする「ナイフ」(攻撃する道具)にも、プレイヤーの選択と結末が端的に示されている。

今回、OMOCATの言葉を受けてもう一度ゲーム内のシーンを見直してみたが、新たに気づいたことが一つあった。

サニー/オモリが進む「方向」のシンボリズム

演劇などで使われる舞台、ステージには「上手/下手」という概念がある。客席側から見て右が上手、左側が下手だ。海外においては演者から見て右側(下手)がstage right、左側がstage leftだ。
この上手と下手については、実は象徴的な意味が持たされる事が多い。いくつかの記事を調べてみると「上手には強者、流れとして自然なもの」、「下手には弱者、流れに逆らうもの」が配置されるという話がある*1

同様に海外のウェブサイトを調べると以下のような解説が見つかる。

Left or Right? Why a Character's Lateral Movement On-Screen Matters in Film

こちらでは「左から右の動きが自然で、ポジティブなもの」「右から左の動きは不安にさせて、ネガティブなもの」と説明されている。流れとして自然な方向は逆とされているが、やはり左から右の動きは、キャラクターに明るい未来を連想させるものとして扱われているようだ。

そこでOMORIのGood/Bad Endの分岐を見てみると…

Good Ending (Omori_is_gone)

https://twitter.com/drawfest_pixiv/status/1669646246363930624?s=20

Bad Ending (Player_is_gone)

主人公(サニー)が向く方向は右向き、オモリが向く方向は左向きだ。

ホワイトスペースがサニーの演奏する舞台でもある(ホワイトスペースを出る前の一礼から)ことを考慮すると、ここでステージ上での左右の違い……すなわち「逆風に立ち向かい、明るい未来に進む」サニーと、「流れに身を任せ破滅へ落ちていく」オモリの違いが反映されていると読み解くことができると思われる。そして、二人ではオモリのほうが強い(Good Endingのムービーでもサニーはオモリに抱き抱えられている)。

 

この左右の違い、作中ではかなり意識して描かれているのではと思われる。

足を抱えるサニーは右側、慰めるバジルは左側にいる。
事件への二人のスタンスが反映されている?
影=オモリはサニーの右側にできる。

例えば、ハルバル町の冒険が始まるとき、サニーは必ず右側に向かって走り出す。サニーの家は通りの一番左に配置されており、プレイヤーが操作しようとすると自然とその形になる。

ハルバル町の冒険を始める上で、ポジティブな動きを連想させようとしていると考えられる。
一方、サニーの家と同じく左奥に置かれているのが教会だ。OMOCATは教会のシーンをマリの死が判明する場面として劇的に描こうとしていた。*2OMOCATの言う通り、教会にたどり着くまではHOOLIGANSとのポップで少しおかしな戦闘が続く。だが教会の通りを通って左に向かうとき、映画などで左右の動きに見慣れているプレイヤーには不吉な予感が漂っていてもおかしくない。

以前「ハルバル町の家と病院の病室のマップは対応している」と述べたことがある。従って(たとえその過程が苦しいものであったとしても)サニーのポジティブな動きは、病院内を右に向かうことで達成される。バッドエンドではこの動きはカットされている……オモリはいつものようにオトナリルームの階段を昇り、気がつくとバルコニーに出ている。

全体的に、左右の象徴はヘッドスペースには適用されないと考えてもいいかもしれない。ヒロビロ森、イセカイなどのマップは循環しているため左右の違いがなく、迷子になってぐるぐる周っているような印象を与える。水中高速道路のマップのみ、賑やかなラストリゾートへ向かう右と、暗くて意味深なオクブカ井戸へ向かう左で区別されている。

エンディングはどうだろうか。(二度と)動かなくなるナイフエンド、明確に下へ「落ちていく」バッドエンド以外を考えてみると、逃避エンドについてはサニーの母親が運転する車は左へ動いていく。一方、Good Morningが流れる間、景色は左へと流れていく……つまり、車は右向きへと進んでいる。

左右の進む方向は、主人公の決断、未来を連想されるものとして広く使われていると考えられる。

 

OMOCATの講義動画はこのシンボリズムだけでなく、登場人物の役割、使われている色など様々な点でOMORIの作品世界を深く分析する手助けとなると思われる。ぜひ視聴をおすすめします。

 

余談:

ついにVの体を手に入れたOMOCAT

最新の情報は公式アカウントをチェック!

 

 

OMORIコンサートが開催決定!(5月5日)

※これは投稿者が勝手にOMORIイベントを宣伝する記事です。*1

 

祝!世界初のOMORIコンサートがゲーム音楽演奏団体、MUSICエンジン様の演奏で5月5日に開催されます!

ついに……ついにOMORIがリアルイベントになった!しかも演奏会ということは恐らくあのDUETが実演で聴けるということで……嬉しいけれどゲーム内の描写を思い出すと心が痛む……

他の数々のサウンドトラックもオーケストラサウンドで聴けるということで、どんなアレンジがされているのか楽しみです。

 

なおMUSICエンジン様は過去に『UNDERTALE』『幻想水滸伝II』などのゲーム音楽も取り上げており、高い評価を受けられている団体です。どんな素晴らしい演奏会になるのか、期待が膨らんでいく……。

 

なお、OMOCATからのコメントは、

とのことなので、道に迷って4人の子供にチケットを強奪されないよう、コンサートに行かれる方はよく確認して早めに会場に向かいましょう。

 

チケット予約は3月11日(本日)11時からイープラスにて。今のところ配信や録画の公開がされるという情報はありません。イープラスでチケットが買えない方(外国人の方)向けの販売ページも用意されるようですが、行きたい方はなるべく早めに確保しておいた方が良いと思われます。

2023年4月8日更新:

昼公演の一般販売、夜公演の抽選販売は終了しましたが、4月22日(土)10時から追加席の販売があるとこのこと。

世界初のOMORI演奏会、お見逃しなく!

 

続報

11月22日、ミューザ川崎シンフォニーホールにて再びMUSICエンジンさんのOMORI演奏会が開かれます! wow...

追記1:

直近のOMORI関係のニュースといえばこれ。

OMORIのWalkthrough and Artbook(攻略本&アートブック)が3月以降発送を開始するという告知が、Kickstarter上で発表されています。

「264ページからなる、100以上の新規イラストを収録した攻略本」と「92ページからなる、OMORIアーティストへの特別インタビューを収録したアートブック」のセット。OMOCAT SHOPから予約ができます。 通常販売が開始しました!非常に大きいので注文するときは送料もチェック。

OMORI: The Official Walkthrough & Artbookwww.omocat-shop.com

 

OMORI考察する上でも必読になりそうな一冊。後でPDF版の販売も予定されているそうなので、OMORIについてもっと深く知りたい方はぜひ。

 

追記2:

OMORIの楽曲提供者の一人であり、My Timeの作曲者として有名なBo En氏が最近アップロードした"no thoughts, empty head bo en VGM"というシリーズ動画。『Pikuniku』『いっしょにチョキッと スニッパーズ』など今までBo En氏が提供してきたゲーム音楽をまとめて聴くことができます。

youtu.beその中には「OMORI」に提供した音楽も勿論含まれていますが、上の動画の41:52から聴ける曲"Fight Your Friends"は今のところサントラ未収録。とても良い曲なので、Youtubeで聴けるようになったのはとてもありがたいです。そんな曲知らないよ!って方はぜひコンソール版(Switch、PS4Xbox)をプレイしてみてください。(これもOMORIコンサートで聴けたりしないかな……ドキドキ)

ちなみ同動画の17:32~はゲームに使われなかったバージョンの"Fight Your Friends"が聴けます。OMORIぽさよりBo En氏の作風が全面に出た音楽で、比較して聴いてみるとなかなか面白いです。

*1:記事に間違いがある場合、執筆者に責任があります。また正しい情報は必ず公式サイトでご確認ください。

【終了】OMOフェス、10月30日開催!

※考察記事ではなくイベントの告知のみになります

※主催者様とは関係なく勝手に宣伝している記事となります*1

 

お久しぶりです。

OMORIオンリーイベント、OMOフェスが10月30日(日)10:00~23:30で開催!

pictsquare.net

以前もちらっと宣伝しましたが、いよいよ開催が近づいてきたので改めて告知させていただきます。

Webオンリー(pictSQUARE)で開かれるこちらのイベント、なんと(現時点で)68ものサークルが集ってOMORIの同人誌、グッズなどの即売や展示を行うそうです*2
更に一般参加者は無料で入れます!Wow...

 

電子本の無料配布や写真の展示、ネットプリントできる作品も多いそうので、歩き回るだけでも楽しいはず。
あまりこういうイベントに参加されたことがない……という人も気軽に覗いてみませんか?

会場内を歩き回るためにはアバターが必要ですが、pictSQUARE側でデフォルトのアバターが用意されている上、有志の方が作成された、OMORIキャラになり切ることができるアバターも多数配布されています!

mobile.twitter.com

ぜひ色んなキャラの姿で歩いてみましょう。(使う際は各作者様の注意書きもチェック!)

ちょっと大変ですが、自分でアバターを作ることもできます。

 

滅多にないであろうこのお祭り、ぜひ楽しみましょう!

(そして素晴らしいゲームを世に送り出してくれたOMOCATチーム、本当にありがとうございます……!!)

 

Twitterで各サークル様も告知されていますので要チェックです。

mobile.twitter.com

 

以下私信

ここまで宣伝しておいてなんですが、私は一般参加です(展示するには作業が間に合わなさそうだったので)。

OMOフェスに合わせて公開する予定だった記事もまだ未完成です……かなしみ……

4ヶ月以上動いていない考察ブログですがまだ更新の予定はありますので、よろしければお暇なときに見てください。

 

10/31 追記

OMOフェス参加しました!めっっちゃ楽しかったです!

主催者様とサークル参加の皆様、ご一緒していただいた全ての方に感謝を……

 

*1:万が一不備がありましたら私のTwitterの方に連絡をお願いします。

*2:注意:サークル参加募集は既に打ち切られています。

お知らせ(6月号) & FARAWAY TOWN観光案内 その1

※このブログのすべての投稿にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

※英語版と日本語版のスクリーンショットが混在しています

 

お久しぶりです。

OMORIコンソール版が出るぞ!

alternate route(ひきこもりルート)に新コンテンツ!
もともとひきこもりルートは(今でも十分すぎるぐらい遊べるとはいえ)サニールートと比べてボリュームが控えめとは言われていて、開発が間に合わなかったのではないか?と噂されていた。が、本当に追加コンテンツが出てしまうとは……

バジルが戦闘画面にいるということは、序盤で言われていた「バジルも戦闘スキルを身に着けた方が良いよ!」という約束を果たしたことになりますね。なお現実のバジルとの約束

現時点ではSteam版で追加コンテンツが遊べるかはわからないので、コンソール版を買うのが確実。解像度を合わせるために追加された背景も、状況によって変化するようなので更に没入感が高まること間違いなし。

是非その目でお友達との戦闘を見届けよう!

 

今回はこういったお知らせをいくつかと、小ネタを少し紹介する予定(コンソール版が発売されたらしばらく記事が出せなくなるのでその前に考えていること全部書いてしまおうという企画。)

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OMORIの音楽 その2 ワルツ/バイオリン

※このブログのすべての記事にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

※英語版、日本語版のスクリーンショットが混在しています

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「ワルツはいつも私のお気に入りだった」とマリは言う。2人が最後のリサイタルのために選んだ「デュエット」、OMORIのメインテーマもワルツだ。

マリの言葉を聞いてからゲーム全体を振り返ると、OMORIにはワルツが溢れていることに気づく。"WHITE SPACE"(ホワイトスペース)、"Lost At A Sleepover"(オトナリルーム)、"Welcome Again."(ブラックスペース)など重要な場所ではいつもワルツが使われている。

それでは、ここでワルツが登場するのはなぜか?

 

そもそも、ワルツとは何なのか?

ワルツという言葉はあまりにも幅広い範囲に適用されている。3拍子の曲について私たちはよくワルツという言葉を使うが、じゃあワルツと3拍子の違いは何か、と聞かれてもすぐには答えられない。狭義のワルツ、19世紀に流行した舞曲については、あまり多くは知られていないだろう。

OMORIにおけるワルツの描写はかなり多義的だ。そしてワルツについての前提知識があれば更に深読みできる部分もある。

 

今回は、アマチュアヴァイオリン弾きであり*1クラシック音楽オタクである私が、OMORIの音楽描写について深読みをする回になる。

恐らく「作者の意図」という点では想定されていない考察もあるだろう。しかし、考察は元の作品の描写だけに縛られるものではない。作品世界を更に奥深くまで広げ、想像力を動かす手助けになるのが、面白い考察の特徴だと思う。*2

実現できているかは分からないが、私の文章が少しでも世界を広げる助けになることを願っている。

*1:今まで明言していなかったが、私がここまでOMORIにのめり込み、ブログに大量の文章を投稿することになった理由は、バイオリンに関する描写が心に刺さったからに他ならない。

*2:実はこれはオスカー・ワイルドが文芸批評において主張した立場を参考にしている。彼は批評が作品から独立した芸術的価値をもつこと、批評が作品そのものではなく、作品に触れた批評家を対象としていることを指摘したのであった。『ドリアン・グレイの肖像』の序文に書かれた文章も同様のことを指している──「芸術が映しだすものは、人生を観る人間であって、人生そのものではない。」(福田恆存訳, 2016, 新潮社)──

彼の批評についての考えは「芸術家としての批評家」(オスカー・ワイルド全集第4巻)、概説はピエール・パイヤール,大浦康介訳「読んでいない本について堂々と語る方法」III-4で読むことができる。

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Not Good Ending(グッドエンディングについての考察)

※このブログのすべての投稿にはゲーム「OMORI」についての重大なネタバレが含まれます

 

3月は忙しくて記事を書けなかったが、1日のマリの誕生日から始まりSwitch、PS4版発売の発表、中国語、韓国語のローカライズなど大きなイベントの連続だった。また日本語版の文章もアップデートされ、以前から指摘していた「Gキーの場所」「マリの墓に供えられたスズラン」が修正されているのが本当にありがたい。失われた図書館の□の数など重大なミスも残ってはいるが、今後のアップデートで直されると期待している。

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中国語のPizza Job。日本語版では英語のままだったが、韓国語と中国語バージョンだとここも翻訳されている。羨ましい(がどっちにしろ読めないんだろうな)。

また、日本語版リリースから4か月がたち、日本におけるOMORIファンコミュニティも非常に大きくなってきた。鋭く面白い視点から考察をされてる方も多く、OMORIを盛り上げたいという気持ちで始めたこのブログもそろそろバトンタッチの時期かなと思っている。とはいえ、書きたいものがある限りは細々と続けていると思います。

そんな中、少しコメントしたくなる考察を見かけたので紹介。

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