遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。12月にOMORIの日本語版が出てから、このブログの閲覧数も急激に伸びました。こんなにも多くの人に読んでもらえるとは思っていなかったので、うれしい限りです。
年末年始は用事で忙しく、一周年記念や新年祝いに合わせた記事が書けていなかった。いくつか新しく発見した小ネタなどもあるのでこの機会にまとめることにした。
※他の投稿と同じく、本編(トゥルー、ひきこもりルート両方)についての重大なネタバレがあります。また、日本語版と英語版のスクショが混在しています。
一周年記念イラスト
12月から1月にかけて怒涛のイラストが公式から発表されたが、万が一見てない人はすぐに見に行ってほしい。
it’s been one year. pic.twitter.com/Sgq5YY5Kmg
— OMORI (@OMORI_GAME) 2021年12月25日
the process for OMORI's anniversary piece. initially, i wanted to make a diptych, but didn't have enough time. pic.twitter.com/Od9zgybv4W
— OMOCAT (@_omocat) 2021年12月25日
ほとんど考察も不要だと思われるが、一つだけ補足が必要だとしたらこのコメントだろうか。diptychとは二連画と訳されることが多い言葉で、単に2枚の絵を組み合わせたものから、教会の祭壇に飾られる二枚一セットの絵画まで幅広い範囲を指す単語だ。これらの絵について一番よくある組み合わせは、2枚のうち片方が生、もう片方が死を表しているというものである*1。
ただ、この絵のコンセプトではヘッドスペースでバイオリンを弾くサニーと、じっと見つめるサニーの横顔の対比になっているので、むしろ夢と現実、動と静の対比ととらえるべきかもしれない。チューリップとバラに囲まれたヒマワリが眼に見えるのも、現実から目をそらさず見続けること(特にSOMETHING)を隠喩しているのだろう。
映画の小ネタ
HIKIKOMORI ROUTEでSOMETHING IN THE DARK(高所恐怖症の「何か」)を倒したときに手に入るスキルは"VERTIGO"(「めまい」)だ。
ここから私が連想したのはA.ヒッチコックが監督した映画「めまい」だった。この映画ではトラウマから高所恐怖症になった男が巻き込まれる事件が描かれており、OMORIとの共通点も多いのではないかと思われた。
……という経緯で年末の間にはりきって観てはみたものの、いくつかのモチーフが似通っている以外ではほとんど関連性はなさそうである。*2とはいえ面白かったのは確かなので、ここで紹介させてもらう。
映画由来のネタについてはまだまだ網羅できていないものが多い気がする。OMORI中で一番強いザコ敵が"RABBIT?"「ウサギ?」だが、やたらと強いウサギといえばウィザードリィのボーパルバニー、あるいはさらにその元ネタである映画「モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル」のキラーラビットだ。あまりに大量のうさちゃん(BUNNY)が登場するので忘れていた……。
SPACE EX-HUSBAND(スペース元旦那戦)について
気づいてなかったんですが、SPACE EX-HUSBANDって思い出に対応する感情しかならない代わりに、全ての3段階目の感情になることができるんですね。
なるべく感情をNEUTRAL/ふつうに戻そうとするところからも、スペース元旦那とオモリの感情周りのシステムはよく似ている。以前述べた「NEUTRALには『ふつう』のほかに『何も感じられない』の意味がある」という説の補強になるだろう。
またスイートハートを失った=心臓を抜き取られたためか、胸に穴が空いているように見えるスペース元旦那だが、彼との戦闘曲"You Cannot Go Back"では低音でずっと心臓の鼓動を模したキックが聴こえる。
音楽の激しさにもかかわらず鼓動だけは一定の周期を保っているのがNEUTRALのボスらしい。
ついでに。スペース元カレ(SPACE EX-BOYFRIEND)戦のBGMの名前は"You Were Wrong. Go Back."であり、"You Cannot Go Back"と対応している。「もうお前は(彼女のところに)戻れない」の意味だが、オモリとスペース元旦那の共通点を踏まえれば、「もう(サニーは現実に)戻れない」とも読める。
バッドエンディングについて
先日友人とOMORIのバッドエンディングについてあれこれ話す機会があったのだが、NEIGHBOR'S ROOMについて私には思いつかなかった考察をいくつかしていたのでこの場で紹介*3。
オトナリルームにある虹色の階段。手すりには白い手(あるいは白いヘビ)に見えるものがからまっており、外の世界に行くためにはこの会談で部屋の塀と同じ高さまで昇る必要がある。「階段」がこのゲームで非常に重要な存在であることは間違いない。
塀の外に見えるのは木だ。木はマリの首吊り自殺の偽装に使われた。首吊りをするためにはまず高い場所にいかなくてはならない。「階段を昇って木と同じ高さの場所に行く」行為は、罪人が絞首台を昇るさまを思わせる(ヘビはよく縄のメタファーとして扱われる)。
だが、いつもであれば行き先は切り株であり、当然そこで自殺することはできない。行き先が変わるのはバッドエンディングのみで、サニーに勝利したオモリは病院のバルコニーという「高さのある場所」に出る。
"It's a long way down..."はゲーム中何度も出てくるフレーズだ*4が、どうしてここでオモリ君は身投げをして落ちていくのだろうか。そう聞いたところ、友人の答えは
「『重り』は落ちていくでしょ?」。
……確かに。
他にも、オトナリルームにある時計の時刻、18時10分について(犯行時刻を指しているのだろうか?)、サニーがマリを突き落としたとき、後光が差すのはなぜか(そもそも窓の位置関係から光は差すのか?)についても話したが詳細は覚えていない。
一人で考え続けるのもいいけど、一緒にわいわい考察するのもなかなか楽しいですね。
なにはともあれ、今年もまた多くの人がOMORIをプレイして、そこから新しい世界に出会ってくれればと(そしてそのわずかな助けになれたらと)思っています。
happy new year! here’s to the future. pic.twitter.com/YiQbqlMcoE
— OMORI (@OMORI_GAME) 2022年1月1日
*1:典型例として、アンディ・ウォーホルがマリリン・モンローの死後すぐに制作した「マリリンのディプティック」などがあげられる。
*2:似ている点は教会、花屋、水への飛び込みといった場所の類似と、殺人を自殺に見せかけたところぐらいか(ネタバレにつき反転)。しかし、いずれも偶然の一致といえる範囲だ。
*3:掲載料として一件につき2000円(20ドル)を請求されたりもしたが
*4:日本語版で「底は深そうだ」「相当な高さだ」と訳し分けてしまったばかりに、同じセリフであることが伝わらなくなったのは非常に惜しい。